三日坊主の早朝ウォーキング-11

三日坊主の早朝ウォーキング

今世界は戦争の時代だ。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争、これらの悲惨な戦争を正しく理解するために、イスラームの歴史を知っておくことは必須項目となっている。
今回はイスラームの歴史を調べてみました。

イスラーム:起源から現代まで

はじめに
イスラームは、現在20億人を超える信者を持つ世界第二位の宗教です。7世紀にアラビア半島で誕生したこの宗教は、世界の歴史、文化、政治に多大な影響を与えてきました。本記事では、イスラームの起源から現代に至るまでの歴史と、その主要な教義について詳しく解説します。

イスラームの誕生 アラビア半島の状況

7世紀前半のアラビア半島は、以下のような状況にありました:

厳しい自然環境: 砂漠とオアシスが点在する過酷な地形で、人々は農耕と遊牧を組み合わせた生活を送っていました。
商業の発展: 隊商(キャラバン)を組織し、長距離交易を行うことが一般的でした。
メッカの繁栄: ササン朝ペルシャとビザンツ帝国の抗争により、シルクロードの経由地としてメッカが栄えました。
宗教的状況: 各部族が独自の神々を崇拝する多神教が主流でした。カーバ神殿には360体もの偶像が祀られていたといわれています。
社会の問題: 富の偏在や道徳的な乱れが社会問題となっていました。

ムハンマドとイスラームの成立

このような環境で、メッカ出身の商人ムハンマド(570年頃-632年)が重要な役割を果たします:

啓示の受容: 40歳の時、洞窟で瞑想中に天使ジブリール(ガブリエル)を通じてアッラーからの啓示を受けます。
イスラームの宣教: 唯一神アッラーへの信仰と、社会正義を説き始めます。
迫害と移住: メッカの有力者たちから迫害を受け、622年にメディナへ移住します。これを「ヒジュラ」(聖遷)と呼び、イスラーム暦の元年となります。
ウンマの形成: メディナでイスラーム共同体(ウンマ)を形成し、宗教的指導者かつ政治的指導者となります。
メッカ征服: 630年にメッカを無血征服し、カーバ神殿から偶像を一掃して、イスラームの聖地としました。

ムハンマドの活動は、単なる宗教改革にとどまらず、アラビア半島の社会構造を根本から変革するものでした。

イスラームの教え

イスラームの教えは、信仰(イーマーン)と実践(イスラーム)の両面から構成されています。
主要な概念

タウヒード(唯一神信仰): イスラームの最も基本的な教義で、アッラーの唯一性と絶対性を強調します。
啓示: アッラーは預言者たちを通じて人類に啓示を与えたとされます。
終末論: この世の終わりと最後の審判の日の到来を信じます。

六信

ムスリムが信じるべき6つの事項:

  1. アッラー: 全知全能の唯一神
  2. 天使: アッラーのしもべであり、神と人間を仲介する存在
  3. 聖典: クルアーンだけでなく、旧約聖書、新約聖書の一部も含まれます
  4. 預言者: アダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエス、そしてムハンマド(最後の預言者)
  5. 来世: 死後の世界と最後の審判
  6. 天命: 全ては神の意志によって定められているという考え

五行

ムスリムが実践すべき5つの義務:

  1. 信仰告白(シャハーダ): 「アッラーの他に神はなく、ムハンマドはアッラーの使徒である」と唱えること
  2. 礼拝(サラート): 1日5回、メッカの方角に向かって行う礼拝
  3. 断食(サウム): イスラーム暦9月(ラマダーン月)の日の出から日没まで断食すること
  4. 喜捨(ザカート): 収入や財産の一部を貧しい人々に施すこと
  5. 巡礼(ハッジ): 可能な者は一生に一度、メッカを訪れること

重要な概念

  • クルアーン: イスラームの聖典。アッラーの言葉そのものとされ、アラビア語で書かれています。
  • シャリーア: イスラーム法。クルアーンとハディース(ムハンマドの言行録)に基づく包括的な生活規範です。
  • ジハード: 本来は「努力」を意味し、信仰を守り、社会を改善するための幅広い活動を指します。しばしば「聖戦」と訳されますが、これは一面的な解釈です。

イスラームの発展と文化

イスラーム世界の形成
ムハンマドの死後、カリフ(預言者の代理人)が選ばれ、イスラーム世界は急速に拡大しました:

正統カリフ時代(632-661年): アブー・バクル、ウマル、ウスマーン、アリーの4人のカリフがウンマを率いました。
ウマイヤ朝(661-750年): ダマスカスを首都とし、イベリア半島からインド北西部まで版図を広げました。
アッバース朝(750-1258年): バグダードを中心に、イスラーム文明の黄金時代を築きました。

イスラーム文化の開花

8-13世紀にかけて、イスラーム世界では様々な分野で独自の文化が発展しました:

  • 哲学: ギリシャ哲学を吸収し、イスラーム独自の哲学を発展させました。代表的な哲学者には、イブン・シーナー(アヴィセンナ)、イブン・ルシュド(アヴェロエス)などがいます。
  • 科学: 数学(代数学の発展)、天文学、医学などで大きな進歩を遂げました。
  • 文学: 『千夜一夜物語』に代表される豊かな文学作品が生まれました。
  • 芸術: アラベスク模様やモスクの建築など、独特の芸術様式を発展させました。
  • 教育: マドラサ(高等教育機関)が各地に設立され、イスラーム学問の中心となりました。

スーフィズム(イスラーム神秘主義)

12世紀頃から発展したスーフィズムは、内面的な信仰体験を重視し、瞑想や修行を通じて神との一体化を目指す思想です。イスラーム世界に精神的な深みをもたらし、文学や芸術にも大きな影響を与えました。

イスラームの多様性と現代の課題

主要な宗派
イスラームには主に以下の宗派があります:

スンナ派(全体の約85-90%)

ムハンマドの教えと実践(スンナ)を重視します。
4つの主要な法学派に分かれています:

  1. ハナフィー派:トルコや中央アジアで主流
  2. シャフィーリー派:東南アジアやコーカサス地方で主流
  3. マーリク派:北アフリカで主流
  4. ハンバリー派:サウジアラビアで主流、原理主義的傾向が強い

 

シーア派(全体の約10-15%)

アリー(ムハンマドの従弟かつ娘婿)とその子孫を正統な指導者(イマーム)と認めます。
主な分派:

  1. 十二イマーム派:イランで国教とされている最大のシーア派
  2. イスマーイール派:インド等に少数派として存在
  3. ザイド派:イエメンで主に見られる

 

現代の課題

  • 原理主義の台頭: 20世紀後半から、イスラームの原点回帰を主張する原理主義運動が活発化しています。
  • サラフ主義の影響: ムハンマドと初期世代の実践に回帰することを主張する思想で、現代のイスラーム思想に大きな影響を与えています。
  • 国際社会との関係: イスラーム圏と非イスラーム圏の間の相互理解と共存が課題となっています。
    近代化とイスラーム: 伝統的なイスラームの価値観と近代化をいかに調和させるかが問われています。
  • イスラモフォビア: 特に9.11テロ以降、西洋社会でイスラームに対する偏見や恐怖が問題となっています。

まとめ

イスラームは、その誕生から1400年以上の歴史を持つ世界宗教です。その教えは信者の日常生活から国家運営まで広範囲に影響を与えています。多様性と統一性を併せ持つイスラーム世界は、現代社会において重要な役割を果たし続けています。
この宗教と文化への理解を深めることは、グローバル化が進む現代において、ますます重要になっていくでしょう。イスラームの複雑さと多様性を認識し、偏見なく接することが、異文化間の対話と平和的共存への第一歩となるのです。

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